2013年07月02日

見る前に飛べる季節は去り行き

過去のあなたの面影へ

暑中見舞い申し上げます。
あの頃の夢は叶いましたか。
最近、ふと、あなたの熱望していたことや語ってくれた野望を思い出しては
迷うばかりで何もしなかった当時の自分自身を眺めています。
夢に向かうあなたのようであれば良かった。
あなたの情熱に、わたしは嫉妬と羨望を抱いていたのかもしれない。
お互いにどこにいるかも解からない今、再会の巡りはあるでしょうか。
懐旧は陽炎をつかむ如く、力を求めてもがいています。

あの頃の夢は叶いましたか?

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2011年02月24日

火の粉

それは消えない、それは癒えない。それは、とてもじゃないが言えない。
気付いたらだいぶ歪んでしまった。
元に戻そうとしたら折れてしまうだろう。
また、一人で痛みを抱えるのか。
今度はあいつも道連れに?いいや、あいつと一緒なんてそれだけで虫唾が走る。
好い加減、赦してやればいい。
恨み憎み怨嗟で心臓を焼くだけにどれだけの貴重な時間をつぎ込んだかわからない。
あんな奴の為に?いいや、それは己の為。
もうそろそろ、自身を解放してやればいい。
剥げる爪に気付かないほど地面を掻き、傷口が化膿したのに気付かないほど正気を失って
それで一体なにを成し遂げられる。なにが出来る。お前に一矢報いる機は無い。
初めの悲しみと、次の憤りは覚えている。
落ちた涙は火の粉になって、肌へ熱傷の痕を残した。
それを癒す方法は、あいつを切り裂いて潰して泥芥の中に放り込むことか?いいや。
あいつの唯一無二の希望を目の前で破り捨てる。
唯一無二?あいつにそんなものがあると思うのか?いいや、思わない。
最期に出来ることは、一端でも日の光に曝すことよ。白日の下に、ただ羅列することよ。
事実、面倒臭くなってきたけど、火粉の痛みがまだ残っている。
果たす前に痛みが消えたらどうなる?
それは、わたしが焼尽したときでしょうよ。どうしようもならない。
果たすのか?いいや、それはまだ解からない。

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2011年02月20日

時効は無い

それこそ、一年だろうが十年だろうが怨みは同じ。
憤激の記憶こそ薄くもなれど、すべて消え去って白紙になることはない。
遣り直しも仕切り直しも和解も相互理解の為の譲歩も、なにもかも或る時点で完結し
凍結でないのだから溶けることもなく、終結でないのだから終わりを迎えることもなく、
どうすることもどうする手段も無いと云う事実に於いて「完」となったまま、
今日この日もまた憎悪の一日として積み重なる。
煮え繰り返り過ぎたはらわたは、どろどろに溶けてスープの具になっている。
年月が行けば行くほど、冷静に「それ」を考えられるようになって、今だからこその
余裕を思って、後悔の念を積み上げる。
感情の不法投棄はいつか山崩れを起こして、自らに降り懸かるに違いない。
ああ、時間も万能の薬ではなかった。
行動を起こさなければいつまでも肝を舐めて薪に寝るしかない、それにしたって
時は既に遅しと、誰に言われるまでもなく自身の頭を使うまでもなく明らかであり
これは何に解決を求めても無駄なのだと再三再四に確認した。
にも係わらず、どこかに終わらせる方法は無いかと目を凝らすのをやめられない。
あの頃よく聴いていた音楽を処分したところで収まるものは無い、治まるものもない、
繊細で悲壮なメロディーはもうそぐわない。

死地へ赴く為の行進曲を、捨て身の為に歩む足に大砲の合唱を。
唯一つ残された決着への手掛かりに何もかも託して、あと一歩踏み出す力を。

ただ、それで終わったとしても、それは仮初の終着点が出来るかもしれないと云うだけで
矢張り、何もかもに手遅れであることに変わりはない。
時効なぞないが、限界はある。
陰湿で気鬱で、たまに激昂しては手がつけられなくなる重苦しい感情を持ち続けた結果、
窮してやつれた精神は恐らくはさほど長く持たないだろう。
そのとき、激情はどこへ行くのか。
牙を向く先はほとんど勝手に潰えてしまった。
醜い戦いだったね、それはあんたが一人でやっていたね。そして、巻き込んだね。
よくも、わたしを巻き込んだね。
人に側杖喰らわせておいて、いいや、あれは最初から狙っていたのだ。
そうしてこうやって切歯扼腕を繰り返す。
もはや、敵はいないのに。敵?倒すべきものだったか、滅ぼすべきものだったか。
唾棄すべき者だったのは確かだが、ほかはどうでもいい。
歳月の錆でまともに動かなくなった思考では妙案も最善策も浮かばない、つまり
このようなことを延々と続けていくしかない。

最近、たまに覚醒しそうになる。
これが非常に、非生産的で無意味な行為だと気付きそうになる。
けれどやめないのは、これが生産的である必要はなく、意味なんぞ最初からない。
その身の不幸と斜陽を心の底から願う。

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2011年01月20日

虚幻新聞、報じる「近日解禁」

sinino_ren05.jpg

「××の中と云うのは、いつもこんな具合ですか」
「どちらかといえばそうです」
「なにも考えず、ひたすら空間を漂う。随分と悠長なもんですね、これはいい」
「はい。これは偶然に行き着いた結末を培養し、研究した結果であり成果です」
擬似宇宙やらプラネタリウムやら天蓋魔境やらと呼ばれるその効果を実感しながら
客が感嘆の息を吐いた。吐息は灰色にけぶってねじれ、空気と混じり合う。

女は腕時計を一瞥してから、客であった者の形骸を見ることもなく踵を返した。

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2011年01月04日

文のようなものを考える、十九

目に映る世界は、つまるところ明暗も表裏も重い軽いも、どうでもよかった。
わたしが心地良いなら、それだけで充分だった。

最初にちくりとしたのはいつだったか覚えていないが、いつからか棘の感覚を覚え
ひどいときは、知らぬ間に血が滲んでいることもあった。
棘を避けているつもりでも、神出鬼没の棘を完全に避けることは難しい。
立ち止まっても気付いたら足の裏にしっかり突き刺さっている。
次の一歩で棘が刺さるか刺さらないかは、そのときにならなければ分からなかった。
黒と灰色の二つの色がぐるぐると輪を描く空を見上げると、いつもより空が低いので
これは雨が降るに違いないと思っていたら、べたべたした雨が降り出した。
雨粒に濡れた顔を拭うと、嫌いな奴の香水の臭いがして胸が悪くなる。

やりたくないなら始めなければいい。
被害妄想だとは笑わせるもんだ、これは被害ですよ。もたらしたのはあんた。
ところで、肩の荷物をまだ下ろせないで右往左往していますか。
振り返って世界の道を探したって無駄です、ここは常に一本道で逆に辿ることは出来るが
同じ道を歩くことは出来やしない。棘のせいか雨のせいか自身のせいかは知りません。

黒い傘を差した女が隣を歩いている。
女は結構前からわたしと共にいて、たまに姿を消すがふらっと戻っては並んで歩いている。
時折、遠くを見詰めることをするのでなにか探しているんだろうと思うが、それを
訊いたことはない。訊かなくてもいいような気がする。
女はあまりしゃべらない。
わたしが嫌いな奴を思い出して胸糞悪くなると、諦め切った顔で息を吐く。
それが自分の溜息のように聞こえるので、女に気を向けることはほとんどない。

雨足が弱まった。
手の甲がぴりりとしたので見てみると、小さい棘にやられていた。
いつもながら、いつの間に、と思っていたら雨一滴が傷の上を這って滑って落ちる。
あの空は、昔は青空のときもあったのに、すっかり閉塞した色に変わり果ててしまった。
雲の上には太陽が在る、と云うが、そうではないかもしれない。

女の探すものは、この世界では見付からないだろう。
それでも歩みを止めないのは、諦めていないからではなく、立ち止まると足の裏に
棘が刺さるからだ。そうに違いない。

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2010年12月14日

虚幻新聞、報じる「過誤記憶」

sinino_ren05.png

過去の分岐点で切り離したはずの者が蘇る。
覚えているのはこの女がわたしであると云うことだが、わたしはこの女かと云えば
それは違う。
では、わたしはどこに存在しているのか。
現実を唾棄して後退り、転落を選んだのが確かであるなら、目覚めた場所はどこだ。
わたしは仰臥したまま女に声をかけた。
女は一瞬、驚愕の色を目に走らせた。返事はない。
鏡を見たことがあるかと訊ねたら、苦渋が目から顔に拡がったような顔付きをしたが
そこまでだった。
この女はわたしだが、わたしはこの女ではない。
きっと、こいつはそれが不如意なのだろうと考えたとき、どこかの扉の開く音がした。


別サイトで描いたイラストに、散文後付け。
意味はないけど二日連続。

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2010年12月13日

虚幻新聞、報じる「内部構想」

sinino_ren04.jpg

「服薬の時間と回数を守っていますか?」
女の指が口をこじ開けた。



「あなたがた、死に行く脳細胞連合は
阻害と執着の精神理論を振りかざし
すべての平和的解決を放棄することにより
解約の正当と合理を違約のように見せ掛け
矢張りそうかと冠を戴いて生じる事柄が
さながら自らの所有であることを
三つの論点を以ってあやふやにし
いずれの場合も」


「我々、死に行く脳細胞連合は
中途半端な願望を抱くがゆえの
諍いや争いには局所麻酔を使用し
連合への係わりの有無を問わず
粛清を施す権限を与えられています」


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2010年10月25日

揮発性メモリー

取り敢えず、思い返さないようにする。
考えないようにする。
それでも、向こうからやってきた場合は、追い返すことも出来ないので
立ち去るのを待つがその内に擦り切れた堪忍袋の緒が切れそうになる。
堪忍袋はすっかりぺしゃんこになっているが、これは中身が無いのではなく
最初の一塊がここに入りきらなかったため、砕いて入れるしかなく、
砕いたものを詰めてはいたが、時間の経過で形が消えてしまったからだ。
消えたものは消えたのではなく、空気の中に混じり合って気色悪い渦を描き
呼吸に合わせて肺の中に侵入しては気分を悪くさせる。
窓を開けたってこれは換わらない。
世界は、既に怒りで満たされている。
ふと気付くと、それが薄れていた。
これはなんと云う現象なのか、きっと病部(だれ)の漢字だろう。それはなにか?
疔か瘢か。痍痕を残さずに終わることは出来ないのか。
癌の如くはびこり、死を確約するものか。
けれど思う。やまいだれの漢字の中に、癒と云う文字があることを。
記憶は揮発し、空気の中に溶け込む。吸い込むから、完全に忘れることは出来ない。
黒い煙を吐き出す煙突の存在を疎んでも仕方がないのと似ている。

posted by しおのや at 21:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 散文のこころ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月12日

二人きりの天文同好会(五人以下はクラブじゃない)

school_101012.jpg

むしろ、規模は愛好会。
でも、愛しているのは天の星でも惑星でも暗黒空間でもない。
本当のこと言ったら、あんた居なくなるっしょ。

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2010年10月08日

every other scrap

sh101005.jpg

その人が決めたのなら、誰にもどうしようもないと解かっている事態に
それでも僅かな心変わりの可能性を否定する結末がないと云う理由で
運命に挑みかかってみたけど、かの人の足を止める石塊にすらならないってさ。

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2010年09月04日

虚ろな窮屈

nolnod.jpg

少し一人になりたい。少し休みたい。少し肩が重い。少し焦りに追われている。
いささかも通じていない。いささかも掠らない。いささかかもいやさかも。
本当に一人になりたい。本当に休まなくてはいけない。本当に離れやしない。
ちょっとばかり伝えたい。ちょっとばかり掠り傷を負った。ちょっとしたひょっとして。
大綱も細目も玉石混交だってね、エントロピーは頂点へ向かう。
わたしを信じる唯一無二は、わたしが信じようと信じまいと、どうでもいいらしい。
今、やや、やばい。

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2010年09月02日

二学期、始業式

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彼女の夏服が見られるのも、あと二ヶ月くらいだ。
と思うと、もくもくと湧き上がる入道雲も、陽に透けるスカートの生地の薄さも
ワイシャツの白さも、肌を焙る熱い風も、道端に散らばる蝉の死骸も、
季節限定非可逆の、懐しい色に染まっていく。
「なにぼーっとしてんの?」
熱がある。
視界が陽炎に覆われていく。
「置いてくよ」
背を向けた彼女の制服の色が、視界いっぱいの世界になって拡がった。夏も終わりか。
彼女の声が、遠くから季節を飛び越えて耳に飛び込んできたけれど、
なんと言っていたのかは、もう覚えていない。

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2010年08月03日

夢寐残筆 「平和主義者」

mubi20100803.png

わたしを尋問していた男は、胡散臭い文句を並べている最中に殺された。

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2010年07月26日

青空戦域

darkrooms_bluesky.jpg

「ドアの向こうはいつでも晴れていたし、ドアはいつも開いていた」

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2010年07月15日

文のようなものを考える、十八

白紙を渦巻き線で塗り潰す直前、そいつは言った。


最初からね、無計画だったんですよ。
うまくいけばうまくいく、なんて皮算用よりも荒っぽい計算の上で始めたんですから
最後の解がプラスになる保証なんてものもありませんでした。
見通しなんてあるはずもない。
ただ、最初にあったのがマイナスだらけだったんで、マイナスとマイナスをかけると
もしかしたらもしかする、なんて考えも少なからずありました。
自己暗示のようなものですけどね。
だけどまあ、マイナスを積んでいけばマイナスの山になるのが現実ですよ、
乗算ってのは運がよければ起こる博打みたいなもんで、それが結果になるってのは
早合点もいいところ、心のどこかで願をかけているってわけでした。

うまくやるつもりだったなら、もっと図面に線を引くべきだった。
成し遂げる為に、尽力するべきだった。

じゃあ、その動機がない場合はどうしたらいいんでしょう。
この計算の答えがなんであろうとどうでもいい、と云う心の下に在ったら
努力に消費する時間を惜しんでも、おかしくない。
砂浜で、なにもせずに砂の城が出来る確率はどのくらいでしょうね。
0ではないって?

だから、確率論は嫌いなんです。


真っ黒になった紙を眺めて、そいつは深く息を吐いた。

posted by しおのや at 20:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 散文のこころ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月10日

形而の形状

silhouette_anknown2.jpg

無形のものを感じ取り、読み取り、形を再現させる。
常に全力で行わなければ満足の行くものを得ることが適わない、非生産的な行為。

posted by しおのや at 22:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 散文のこころ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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